西部地区での起業

2022.04.26
西部地区での起業
函館の原風景

Specialty Coffee COCORO 代表・焙煎士 浅水 心吾

北海道最古といわれるアーケード。

十字街に残るその古いアーケードの下に、私が「Specialty Coffee COCORO」を開業したのは2021年6月のこと。

道南随一、北海道内でも数店しか使用することが許されていない世界最高級の生豆を使った自家焙煎珈琲豆専門店である。

このレトロな街並みに、外から店の奥まで丸見えのひときわ明るい店構えとしたのは、お客様により安心して気軽にご利用いただきたいから。

「世界最高級の珈琲豆専門店」なんてうたい文句は、自分で考えても堅苦しくて、敷居が高い。

でも、本当に美味しいコーヒーをより多くの皆様に気軽に楽しんでいただきたい。そんな想いから、このような店構えになった。

西部地区は函館市民の中でも観光地としてのイメージが強く、住宅地が広がる東部の方からは足が遠い。でも、実際は車で20分程度。街がコンパクトなのは、函館の長所だ。

私が育ったのは、JR五稜郭駅周辺。西部地区には縁がないように思われるが、小・中学生の頃、谷地頭電停から山を少し登ったところにある「臥牛牧舎」で10年近くボーイスカウトに通い、その活動を通して函館山も西部地区も庭みたいに駆け回っていたものだ。

市内の高校を卒業後、大学・会社員とおよそ28年間も函館を離れていた。その間、いろいろな方と函館の話になり、そのほとんどは函館が好きだという内容だった。そして、函館の好きなところ、函館のイメージを聞くと多くの方が夜景・海鮮料理・五稜郭・温泉と並んで、ノスタルジックな街並み、レトロな建造物、教会群を挙げる。道内の方であろうと本州の方であろうとだ。いわずもがな、それはここ西部地区のこと。函館市民が函館の説明をするときも、同じだと思う。

つまり、日本人の中にある「函館の原風景は西部地区」なのである。

西部地区の衰退が叫ばれて久しいが、西部地区にはまだまだ可能性がある。チャンスが眠っている。函館に憧れて移住を希望する人は多くいるが、一方で移住しても仕事がないという声をよく聞く。時代背景や新型コロナウィルスをキッカケに日常生活や仕事の考え方、スタイルが大きく変わっている。魅力的な建造物が数多くあるこのエリア。函館市行政と地域が一体となり、空き物件の家賃サポートや開業資金の助成を行い、若者の起業支援を手助けするなど、人が集まる施策が必要不可欠だ。実際、当店の常連さんの中にも、本州から移住されてきた方が多くいる。

そのためにもまずは西部地区の住人が、街の再興を諦めないこと。どうせ観光地だから、市民は来ないから、俺に得はないから、あっちの通りの店は何屋か分からん等と言わないこと。

西部地区は、函館の原風景だ。この事実がある限り、西部地区は生き続ける。

歴史と新文化の融合。この可能性は、西部地区にこそ大きくある。

もし、その端っこを当店が担っているのだとすれば、これほど喜ばしいことはない。函館市民に愛される珈琲店を目指して…

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