共創のまちぐらし

2023.06.05
共創のまちぐらし
第5回 函館西部まちぐらし共創サロンを開催しました

令和5年3月24日(金)に元町公園内旧北海道庁函館支庁庁舎2階において、地域住民等41名の参加のもと、函館市西部地区再整備事業基本方針に定める「共創のまちぐらし推進プロジェクト」の一環として、「函館西部まちぐらし共創サロン」を開催しました。(開催のお知らせはこちら)

開催趣旨

「西部地区における共創のまち育て」をコンセプトに、地域住民をはじめ、市民やまちづくりに関わる参加者が西部地区の未来を考え共有し、語り合い、アイデアをカタチにする新たな取り組みとして「函館西部まちぐらし共創サロン」を開催いたします。
さらに参加者一人ひとりの意見やアイデアを尊重し、今後立ち上がっていくプロジェクトを主体的に運営してもらうことを目指します。
今回は「移住者から聞く西部地区のまち暮らしとは」をテーマに開催いたしました。

会場内の様子

進行・コーディネーター

合同会社箱バル不動産 谷口 敦 氏

【自己紹介】
・箱バル不動産は、西部地区を中心に古民家や歴史的建造物を扱ってきており、リノベーションも手がけている。
・個人としても北斗市に茅葺屋根の家を所有し、仲間とともに「茅葺屋根再生プロジェクト」を進行中である。
・趣味の一つとして、林業に興味があり、南茅部地区で木こりの修行中である。
・最近では、亀尾地区の酪農業の方に声を掛けられ、搾乳を経験した。
・西部地区は、古い建物が多く、町並みも良い、函館山もあり、海に囲まれている、魅力ある地域だと思うし、西部地区以外でも、少し足を伸ばせば、いろいろな楽しみ方があることが函館の魅力であり、遊び尽くせないまちであると感じている。

函館の移住支援について

移住サポートセンター 谷口 真貴 氏

【話題提供】
○自己紹介
・神戸市出身。阪神淡路大震災を経験し、復興に向けて何か活動できないかとの思いから、まちづくりに興味を持ち、2009年から3年間、厚沢部町で地域おこし協力隊員として活動した後、2013年に函館に移住し、函館市地域交流まちづくりセンターで移住相談窓口の相談員として活動中である。
○函館市地域交流まちづくりセンターについて
・大正12(1923)年に丸井今井呉服店函館支店として建築された。
・平成19(2007)年に地域交流まちづくりセンターがオープンした。
・情報発信、生涯学習の支援、NPO・市民活動団体の支援、交流場所の創出、移住者支援の5つを大きなミッションとして活動している。
○移住サポートセンターについて
・函館市への移住相談窓口(ワンストップ窓口)として、函館市への移住を検討している方、二拠点生活(行ったり来たり)を検討している方、函館に移り住んだ方(定住)、二拠点生活をはじめられた方へのご相談、お問い合わせ等に対応している。
・函館に移住してきた方が函館に移住して良かったと思っていただけるように活動している。
○移住支援について
・移住サポートセンターを知っていただくための活動とパーソナルな活動、すなわち移住希望者に寄り添った活動の2つを行っている。
・相談方法は、来館、電話、メール、オンラインの4通りあり、2019年以降、相談件数は増加傾向にある。
・移住を検討されている方に移住サポートセンターについて知っていただくために、広報誌の発行やホームページ・SNSでの発信など行っている。
・移住者と市民の交流や情報交換の場として、まちセン茶論(サロン)を開催している。
・テレワークなど自宅等で仕事をされる方も増えてきているが、地域との接点をつくり、地域を知っていただくことが大切と思うので、仲間づくり・活動の場づくりは今後も継続したい。
・移住者は多種多様、高齢者も若い世代もいるので、移住サポートセンターだけでなく、地域のいろいろな方に協力していただくことで移住者のニーズに応えられる。

【参加者からの質問】
・移住件数はどのように把握しているか。
 →移住件数の把握は非常に難しく、現状は、移住者からの報告(交流会での聞き取り、移住時の挨拶など)をもとに計数している。
・移住の定義は何か。近隣市町村からの引っ越しや転勤も含まれるのか。
 →明確な定義はないが、住民登録した方は移住者と言えるのではないかと思う。引っ越しと同義と思うが、移住サポートセンターの立場では、移住相談や移住者交流会に来られた方に情報提供するなど、暮らしのお手伝いをすることが仕事なので、移住・移住でないという区別をすることはないが、これまで北斗市や七飯町から引っ越しされた方からの相談はない。
・移住相談の中には、移住希望先が函館と決まっていない方からの相談もあるか。
 →これまでアンケートなどでは、移住先として函館に決めている方が多いが、今後、移住先を検討している方にとって、函館の魅力や住みやすさを伝えることは大事と思う。特に、最近は二拠点生活を検討する方が増えているので、函館への移住促進に向けてアプローチしていきたいと思う。

移住者が語る西部地区のまち暮らしについて

ゲストスピーカー① みそしる 代表 藤井 拓

【自己紹介】
・横浜市出身。2021年に結婚をきっかけに妻の出身地である函館に移住。
・職業は、グラフィックデザイナーであるが、大町改良住宅で「nel」というデザイン事務所兼雑貨とコーヒーのお店を経営するほか、ウェブメディアを立ち上げ函館を発信している。

ゲストスピーカー② 社労士事務所みなとコンサルティング 池内 美佐子

【自己紹介】
・20代に旅行で函館を訪れ、特に西部地区を気に入り、以後何度も函館を訪れているうちに函館に移住。6年半ほど暮らすも一度関東に戻る。
・社会保険労務士の資格を取得後、生活の場所を検討した結果、再び函館で暮らすことを決意し、8年前に移住、社労士事務所を開業した。

ゲストスピーカー③ 建築士 金子 悠

【自己紹介】
・埼玉出身。フィンランドに留学後、岡山県にIターンを経験し、2年ほど前に北海道に移住。
・市内で設計に関わる仕事に従事。社会人になってから大学に入学し直し、社会学・まちづくりの勉強をしており、銀座通りの建築について研究している。
・移住のきっかけは、コロナ禍で夫がリモートワークになったことに加え、自分も勤務先を退職し、大学もオンライン授業になったことで、移住先を探した結果、最初は大沼に移住したが、その後、函館に引っ越した。
・函館は、夫婦にとって縁もゆかりもない土地である。

ゲストスピーカー④ 弥生町会 役員 木村 美織

【自己紹介】
・2017年、夫の転勤がきっかけで函館に移住。函館で育児をしながら2年間暮らした後、夫の転勤で札幌に戻るも、函館で暮らしたいという思いから、夫に転職を勧め、再び函館に移住。
・現在は、札幌で勤務していた系列店で勤務しながら、町会の役員として活動している。

ゲストスピーカーへの質問

  1. なぜ函館に移住したか
  2. 函館に移住して良かったこと、函館の変なところ
  3. 函館に移住して変わったこと、変わらないこと

(藤井)
・函館は妻の出身地であることに加え、移住前に何度か来函した際に、空港から市街地の距離が近くて、東京との往来がすぐにできるという精神的な距離感の近さを感じた。
・コロナ禍にリモートで仕事をするようになり、東京に住まなくても仕事ができると感じた。
・子育てをするに当たり、函館への移住を妻に相談したところ、最初は乗り気ではなかったが、子どもにとって環境が良いのではないかと思うようになり移住した。

(池内)
・移住したきっかけは一目惚れだったのですが、移住して良かったことは、住んでいたアパートの近所にお店もあり、ご近所付き合いも良かったことで、函館に移住してから交流が広がって楽しく過ごしている。
・函館の変なところは思いつかない。閉鎖的だと言う方もいるが、函館の方は「どうして移住したのか」など興味を持って聞いてくれたり、積極的に関わってくださるという印象がある。

(金子)
・移住を考えたときは、函館に行ったことがなく、函館は観光地のイメージしかなかった。移住を考えるとき、いくつかの条件があり、結果として大沼に移住したが、仕事の都合で函館に引っ越した。
・移住して良かったことは、毎日のクオリティが上がったと感じている。函館は、景色が良く、海も山もあり、古い建物もあり、毎日が幸せと感じる。食材が美味しい、小さいお店もたくさんあるので、人に会いに行く感覚で買い物に行くことができることも喜びである。
・函館の変なところは、ロードヒーティングが壊れたままということ。歩道が凍結しており、観光客も歩く道なのに車道の方が歩きやすいと感じる。
・ 移住して変わったこと、変わらないことですが、インターネットで買い物できるので生活の質は変わらない、むしろ上がったと感じる。

(木村)
・移住して良かったことは、クオリティオブライフが上がった。夜景も海も山も見える場所に家を建てたが、景色が見たいという気持ちから朝の目覚めが良くなった。
・待機児童がいないこと、子どもを連れて行く施設でも慌ただしくないところが良い。人口が少ないという理由があると思うが、子どもが遊ぶ場所も人が少なくて安全でありスローライフを送ることができる。
・函館の変なところは、住みたい場所に住むことができないこと。空き地や空き家があっても所有者が手放さないこともあり、思い描いていた立地に家を建てることができなかった。

ディスカッション

(谷口コーディネーター)
・自身は徳島県出身で、会社の転勤で函館に引っ越し、そのまま転職し移住したが、函館に住むに当たって仕事の面でハードルがあると感じている。転職や起業という面であると良いと感じることはあるか。

(池内)
・20年以上前、移住前に仕事を探そうと思ったが、相談先の職員から移住してから相談するように言われたことがある。移住前に仕事を探したいので、仕事を探す窓口は一つでも多い方が良いと思う。

(藤井)
・移住支援金の申請の際に、リモートワークの概念を巡って何度かやり取りがあり不快な思いをした経験がある。移住してほしいという気持ちがあまり感じられなかった。

(金子)
・建築士の資格を持っているので仕事に関しての心配はそれほどなかったが、企業への就職を検討している方にとってはハードルが高いと思う。
・移住支援金について、東京に5年以上などの要件があるが、必要な要件なのか疑問である。

(木村)
・自身は、札幌にも函館にも店舗があるチェーン店に勤務していたので、配置換えという形で簡単にできた。
・夫は、全国に支社がある企業に勤めていて福利厚生など魅力を感じており転職に迷いはあったが、公務員試験に合格したため、10ヶ月という短い期間で転職・移住することができた。
・函館に移住したいという友人もいるが、仕事の面でハードルが高く実現に至っていない。
・移住支援金など支援制度があっても、要件に該当しなかったので、より充実すると良いと思う。

(谷口コーディネーター)
・仕事の面では厳しい意見が出ていた。函館市は、移住促進に力を入れていないように感じる。
・函館が好きだから函館に移住する方が多いように感じる。移住促進していないのに移住者が来てしまう街なのではないかと思う。
・移住について、みなさんで発信していくことも面白いのではないかと思う。

(谷口コーディネーター)
・私の中で石川方面に住んでいる方は西部地区に興味がない方が多い印象がある。ある特定のお店に行くことはあっても、西部地区に行こうという話はあまりなく、出かけてもシエスタハコダテの近辺までで、西部地区は遠いと思っている方が多い印象である。
・函館はコンパクトでどこへでもすぐにいけると思っているが、市民の間では石川方面から西部地区は遠いという意見に衝撃を受けた。
・元々、新築住宅の営業の仕事をしていたが、電車通り沿いの物件を探したいというお客様に西部地区を勧めたところ、電車通り沿いでも西部地区には住まないという方がおり、函館在住の方にとっての西部地区は不便な場所という印象があるようだ。
・自分にとって、西部地区は電車も通っているし、スーパーもあるし、どこが不便を感じるのかわからないが、ゲストのみなさんはどのように感じるか。

(藤井)
・私は、西部地区は選択肢が少ないと思っている。スーパーは2件くらいで規模も小さい、高齢者が多いからか商品もパンチが足りないように思う。お酒を飲むにしてもハシゴできる環境がないと思うし、冬の坂道は危険と思う。

(池内)
・函館市内で人口が増えている地域の方と話したところ、西部地区に絶対住みたくないという方が何人かいらっしゃって、西部地区が不便だからとおっしゃる。スーパーが少ないということもあるが、売りに出ている土地が少ないので家を構えることができないことも理由と思う。美原方面の方が家を構えやすいと感じる。

(金子)
・車で移動する際、市街地に行くことがストレスで、五稜郭近郊は三叉路も多く車の運転が大変だが、例えば、自宅から中央図書館に電車で移動する場合、自宅から電停まで、五稜郭公園前の電停から図書館まで徒歩で移動することになるので嫌になってしまう。車を所有しない子育て世帯はどうするのだろうと感じている。
・西部地区は、基本的に徒歩と電車で移動したいが、冬期間の歩道は特に危険で、車の方が安全のように思う。移住するのに車が必要ということはハードルが高いのではないかと思う。

(木村)
・コンビニやスーパーまでの距離が遠いので、西部地区を好きな方にとっては散歩と思い楽しいが、西部地区を不便と感じる方もいると思う。
・札幌では近所に雪捨て場があるが、函館には近所に雪捨て場がない。行政があまり除排雪をしないので、坂道の多い西部地区では特に、道路脇に雪が積んであると見通しが悪くなり、子どもを一人で遊びに出かけさせることに不安を抱く。

(谷口コーディネーター)
・移住者と話していたら、バス路線が難しいとおっしゃっていた。
・西部地区は観光地のイメージが強く、住宅地ではないというイメージが先行している方もいると感じる。

参加者との意見交換

(参加者 大学教授)
・移住は誰にでもできることではないと思う。移住者の中には、覚悟して函館に移住するというよりは、20代の独り身でふっと移住する方が多いように感じている。
・移住について、もっとみなさんで議論したい。函館に移住することは、地方都市に移住する感覚なのか、田舎に移住する感覚なのか。大沼や厚沢部に移住する方と函館に移住する方の違いは何か。移住について、深く考えていくべきと思う。
・交通事情について、私は車の運転をしないが、バスはやはりわかりにくいと思う。バス会社の方にも意見を伝えているが、以前より改善したというものの、やはりわかりにくい。北海道新幹線が札幌まで延伸された後、市内のバス路線の維持についてもオンデマンドバスなどが活用されるのではないかと思う。
・西部地区の坂道は大変と思うが、本日の共創サロンだけでも移住者の方から地元の方が見ていない視点で意見がたくさん出されたので、今後も話し合いを続けて整理して行政に提案するところまでやっていこう。

(参加者 西部地域振興協議会役員)
・東京から移住して給料は下がっても、函館は物価が安いので、結果として生活レベルは変わらないと思いながら、函館に長年住んでいるが、みなさんは移住する際に生活レベルについてどのように感じたのか。
・仕事について、東京の給料と函館の給料にはギャップがあり、結果として雇用に結びついていないケースがあると思っているが、みなさんはどう感じているか。

(藤井)
・生活に必要なお金について、家賃は東京の3分の1だし、スペースも東京に比べると広いので生活は向上しているように感じる。
・妻は、函館でアルバイトを検討したが、給料が安く、魅力的な仕事がないということで、東京の仕事をリモートで行っている状況である。

(池内)
・私は、生活水準が下がることは覚悟しており、過去の経歴を活かせる職場で働いているが、結果、年収は大分下がった。しかしながら、近所の方からイカのお刺身をいただいたり、交流があって楽しいし、東京は通勤に時間がかかり、何でも高いので、現状に満足している。

(参加者 西部地区起業者)
・韓国出身で、イギリスとカナダに住んでいたこともあるが、両親が仕事を引退する際に函館の西部地区に移住を決め、その後、自身も約1年前に函館に移住した。
・自身も入舟町で築104年の歴史ある倉庫で花屋をはじめたが、歴史とともに暮らしていきたいと思っている。

(池内)
・元々の基幹産業が衰退して観光産業に舵を切ったということだが、西部地区が観光地として持続するためには、函館在住者が西部地区に住みたいと思えるような街でなければ観光地としての函館は廃れると思う。函館の魅力は、地元の方が紡いできた文化や歴史が感じられることと思う。本当に人気のある観光地は、その土地の方が土地に息づいて文化が感じられるから残っていると思うので、今、分岐点だと思う。

(参加者 音楽家)
・西部地区は、分断されているという印象がある。観光客のいる場所というイメージが強い。地元の方が住んで、街に愛着や関心もあって、地元住民同士の繋がりがあったときに、ここに住みたい、と感じると思う。

(参加者 大学教授)
・小学校についても、コロナ禍におけるリモート学習へのサポートなど、地域によって格差があると感じており、移住を検討する際、教育の問題も気になる要素と思う。

(金子)
・西部地区には、観光地としてではなく、住んでいる方が豊かに暮らせるお店が増えてほしいと思う。古い建物がたくさんあるが、利活用されていないものも多いので、建物を事業用に改修するための費用に対する補助は必要と感じている。

(谷口コーディネーター)
・観光地と居住地が分かれていないことが西部地区の強みと思う。
・古民家を改修して活用したくても、他の都市と比べて函館は融資してくれる金融機関が少ないので、まちづくり会社に支援していただけるとありがたい。
・函館市としても、古い建物を残していくという施策を強く押し出すなど、変わっていけたら良いと思う。
・本日は、移住をテーマに話し合ったが、函館に住むという強い気持ちと覚悟を持った方が函館に移住しているという意見が多かったので、今後、人口増加を目指すのであれば、移住先を探している方に函館を選択していただける施策を促進していただけると良いと思う。


今後も、いただいた意見等を踏まえ、西部地区における様々な「まちぐらし事業」や「まちを学ぶ場の提供」などの取組を進めていきます。
まちづくり・まちぐらしに関する取組は、地域の共感を得て進めることが非常に大事だと考え、より多くの市民・団体の皆さんに西部地区のまちぐらし事業を知っていただけるよう、取組の可視化・見える化にも努めていきます。

なお、「函館西部地区ニュースvol48(4月1日配信)」では、本サロンの開催の様子を配信中でございます。

主催

函館市(函館市西部まちぐらしデザイン室)、株式会社 はこだて西部まちづくRe-Design

協力

函館市西部地域振興協議会、移住サポートセンター